「あなたがコーヒー好きでよかった」
そう言って彼女は、ボクの為にコーヒーを淹れてくれた。
ドリップしているうちに部屋中になんともいえない
良い香りが充ちてくる。
「ああ、なんていい香り・・。」
彼女は微笑みながら満足そうにつぶやいた。
ひとくち、口に含む。
苦味と酸味のバランスがとれたこのコーヒーは、
本当に美味しい。以前はミルクと砂糖たっぷりの
コーヒーを飲んでいたけれど、やはりブラックに限る。
これは彼女も同じだった。
「美味しいコーヒーはストレートに味わいたいから。」
ふたりで、時間と香りを共有している。
それだけでボクは幸せだった・・。
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あの時と同じ種類のコーヒー豆で淹れてみた。
香りもカップもあの時とおんなじ。
でも・・彼女が淹れてくれたあの時の味とは違う。
「わたし・・コーヒーを淹れるの、上手でしょ?」
少し首を傾けて、いたずらっぽく微笑んだ顔が香りと共によみがえる。
そうして・・・
次々とあふれんばかりのたくさんの思い出が浮かんでは消えた。
「すっかり冷めちゃったな・・」
そうつぶやきながらひとりで飲むcoffeeは、やけにほろ苦い味がした。